かつて東京神田にあった「交通博物館」、関東の人なら子供の頃に親に連れて行ってもらった人も多いのではないでしょうか。
その子が親になって、またその子供を連れて行くなど世代を超えて愛されてきました。
1921年「鉄道博物館」として鉄道省の運営で開業、関東大震災で焼失、再建、1936年旧万世橋駅駅舎跡地の新館に移転、「日本交通文化博物館」の名称を経て、1948年から「交通博物館」になりました。
2006年5月14日で閉館、その後、鉄道部門に絞り大幅に充実させて埼玉県大宮に新設された「鉄道博物館」や各地の博物館などに展示物は引き継がれています。
「交通博物館」では、鉄道のみならず、飛行機や車、船など乗り物全般が展示され、まるでおもちゃ箱の中のような楽しくワクワクする空間でした。
入口には新幹線0系とD51蒸気機関車の頭部がモニュメントのように展示され、SLから超特急への変遷を感じさせました。
展示では、鉄道模型の大きなレイアウトに子供ごころに驚いたものです。
1/80のHOゲージのレイアウトはリニューアルしながら存続し閉館まで大人気でした。
1階には、国鉄時代最後のSL旅客列車を牽引したC57.135号機や9850形蒸気機関車、修学旅行専用車として造られたクハ167形レプリカ、重要文化財の1号機関車(150形)、1号御料車などが展示され、屋外には弁慶号(7100形)、善光号(1290形)などの展示もありました。
上を見上げると吹き抜けの天井から徳川好敏陸軍大尉が日本初の飛行に使用した複葉のアンリ・ファルマン機や日本ヘリコプター輸送 (現・全日本空輸)のベル47D-1ヘリコプターが吊るされ、立体的な展示となっていました。
日本航空DC-8コックピット、三菱重工業MU-2コックピット、中島飛行機 誉 星型エンジンなどの展示や、ジャンボジェット、YS-11などの模型の展示もありました。
乗り物を現役の時に見るのもいいものですが、こうして博物館で趣向を凝らした展示をみるのも楽しいものですね。
船舶は南極観測船や世界の客船、帆船、青函連絡船やフェリーなど精密で大きな模型がいくつもあり時間を忘れ眺めていました。
スバル360、マツダT2000などの車や白バイなどのオートバイ、自転車、国鉄バス第1号車や東京市営バス(円太郎バス)、都営バス万世橋停留所の展示、各種バスの模型などもありました。
建物もアールデコ様式の古いもので、階段ホールの窓などにその特徴的な姿を見ることができました。
閉館間際には期間限定で寝台特急「出雲」の編成の一部のブルートレインやEF55形電気機関車が旧万世橋駅跡地の留置線に展示されました。
長年の役割を終え今は見ることのできない「交通博物館」、乗り物を文化遺産として残すというコンセプトは各地の交通関係の保存施設に引き継がれています。