『ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)』2018年イギリス・アメリカ映画 主演:ラミ・マレック

『ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)』2018年イギリス・アメリカ映画 主演:ラミ・マレック
『ボヘミアン・ラプソディ』横須賀HUMAXシネマズ
2019.2.26 『ボヘミアン・ラプソディ』横須賀HUMAXシネマズ 写真:高橋 秀幸

【ボヘミアン・ラプソディ 数々の名曲と共にフレディ・マーキュリーの心の物語を感じられる大ヒット映画】

 伝説のバンド『クイーン』のリード・ヴォーカル、フレディ・マーキュリーを主人公にした伝記的なラミ・マレック主演の2018年イギリス・アメリカ映画です。

 『ボヘミアン・ラプソディ』は日本では多くのメディアで取り上げられたことで幅広い世代に浸透し、2018年暮れから2019年初頭にかけて大ヒットしました。
 50代以上であれば、ファンでなくても『クイーン』の曲は70~80年代にかけてリアルタイムで聞いたことがあり、新しい魅力を感じる若い世代と共に、最初口コミで評判になり、何度も映画館に足を運ぶリピーター需要もあり、異例のロングランで観客数を伸ばしていきました。

 フレディ・マーキュリーになりきったラミ・マレックの名演技と、多くの場面で本物の『クイーン』の音源を使ったライブシーンが合わさり、その世界に引き込まれていきます。
自分を見つけ、自分を見失い、また取り戻す、天才的なパフォーマーもまたひとりの人間でした。
 
 途中まで監督を務めたブライアン・シンガーが解雇されるなど制作上のトラブルがあったこともあり批評家の評判は良くなかったのですが、それを跳ね返すだけの力がある映画で、映画館によっては上映中に観客も参加できるような観方をしていたりして、その良し悪しは別にして様々な楽しみ方が出来ることも話題になる要素だったのでしょう。

 映画らしい分かりやすい盛り上げ方をしている脚本は実際の史実とは違いますが、基本的にハッピーエンドで終わっていることもあり、数々の名曲と共に精一杯生きたフレディ・マーキュリーの人生に感動し、安心して観ることが出来る映画になっています。

 映画公式サイトでは、クイーンのメンバーで映画の音楽プロデューサーを務めたブライアン・メイの言葉を紹介しています。
「これは伝記映画ではなく、硬い岩から掘り出されたような純粋なアートだ。家族や人間関係、希望に夢、悲嘆や失望、そして最後には勝利と達成感が、誰にでも共感できるような物語として描かれている」

 2019年第91回アカデミー賞では、主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の最多4冠を獲得しました。

[あらすじ・・の一部]

 アフリカ難民救済を目的とした大規模なチャリティーコンサート『ライブ・エイド』のステージに向かうフレディ・マーキュリー。
 時は戻り1970年のロンドン、空港で働くフレディはライブハウスで演奏をしていたギターのブライアン・メイとドラムのロジャー・テイラーのバンドに惹かれ、彼らを探し、ヴォーカリストの脱退でバンドの将来を悲観していた2人に会い自らの歌唱力をアピールします。
 彼らに会おうと居場所を探す過程で将来のパートナーとなるメアリーに出会い、バンドにはベースのジョン・ディーコンも加入、フレディの日常は劇的に変化していきます。

イギリス公開:2018年10月24日
アメリカ公開:2018年11月2日
日本公開:2018年11月9日

配給:20世紀フォックス

配役
フレディ・マーキュリー – ラミ・マレック
メアリー・オースティン – ルーシー・ボイントン
ブライアン・メイ – グウィリム・リー
ロジャー・テイラー – ベン・ハーディ
ジョン・ディーコン – ジョゼフ・マゼロ

【フレディ・マーキュリー】

 フレディ・マーキュリーは、1946年9月5日にインド生まれの両親の元、英国保護領のアフリカ・ザンジバル(現タンザニア)で生まれ、インドで学生時代を過ごし1963年ザンジバルに戻り、翌年ザンジバル革命勃発による安全上の理由で17歳で英国に移住しました。
 その後芸術とグラフィック・デザインを学び、卒業後は空港でも働いていましたが、いくつかのバンドで活動をした後、1970年4月、ギタリストのブライアン・メイやドラマーのロジャー・テイラーが所属するバンド『スマイル』に加わりバンドを『クイーン』と名付けました。
 『クイーン』結成後もしばらくは、メンバーのロジャー・テイラーや、ガールフレンドのメアリー・オースティンとケンジントン・マーケットで古着を販売していました。
 出生名はファルーク・バルサラですが、何度かの改名でフレディ・マーキュリーとなりました。

 その出身や善悪二元論をとるゾロアスター教信者の親、特に父親との葛藤、容姿に対する差別などで、自らのアイデンティティを模索しながらも、その音楽に対する絶対的な自信でスターダムを駆け上がり伝説の存在になりました。
 80年代後半、まだ病に対する差別が残る中エイズを発症し1991年11月45歳の若さで亡くなりましたが、最後は命の終わりを受け入れこの世を去りました。
 遺言により遺骨はメアリー・オースティンのみが知る場所に埋葬されました。

 生前最後にステージに立ったのは、1990年2月18日にドミニオン劇場で行われたブリット・アワードの授賞式で、1991年5月の輝ける日々のミュージック・ビデオが生前最後に出演した映像作品になりました。
 スターになってからも孤独の中、無茶な生活をした時期もありましたが、晩年は生涯のパートナー、メアリー・オースティンや男性の恋人ジム・ハットン、大好きな猫たちと共に過ごすことができました。

 生前、両性愛者やゲイであることは公表せず、エイズへの感染も亡くなる前日に公表となりましたが、今では考えれない位大きな差別があった時代でもありました。
 今でも差別はありますが、あの時代に比べればだいぶ変わりました。私たちの世界、私自身も少しは進歩したと言うことでしょうか。

 フレディ・マーキュリーは幅広い音域の声を持つヴォーカリストで、圧倒的なパフォーマーとしての才能、ソングライターやプロデューサーとしての才能などを活かし、数々の名曲を生み出しました。

 親日家で、伊万里焼コレクターでもあり、ロンドンの自宅には日本庭園があります。
 日本公演のMCの半分は日本語で行い、アルバム『バルセロナ』に収録されている「La Japonaise」は日本的な雰囲気のある歌で歌詞の大部分は日本語になっています。。

 マイケル・ジャクソンやレディ・ガガなど後のアーティストにも多くの影響を与え、この映画『ボヘミアン・ラプソディ』をきっかけに『クイーン』の楽曲を知った当時の活躍を知らない若い世代にも新たな影響を与えています。

【ラミ・マレック】

 『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックは、2019年第91回アカデミー賞で主演男優賞を受賞しました。
 1981年、ロスアンゼルスでエジプトの移民の子として生まれ宗教的にもマイノリティでした。
 エバンズビル大学を卒業した翌年の2004年から、TVシリーズ『ギルモア・ガールズ』へのゲスト出演を皮切りにTVドラマに出演し、2005年~2007年に放送されたFOXのコメディ・ドラマ『The War at Home』で人気になり、2006年、2009年、2014年公開の映画『ナイト ミュージアム』シリーズで展示物であるエジプト国王アクメンラー役を演じました。
 2015年スタートのドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』で主人公エリオット・オルダーソンを演じ第68回エミー賞主演男優賞を受賞しました。

 アカデミー賞のスピーチでラミ・マレックは子供だった自分を思い出すように語りました。
 「その少年は自身のアイデンティティに悩み、自分は何者なのかと模索していました。アイデンティティに悩み、自分を見つけようとしている全ての人に聞いてほしい。
 僕たちは、悪びれることがなく自分の人生を生き抜いた、移民で、ゲイの男の映画を作りました。今夜、皆さんとともに彼とその物語を祝福することができたという事実こそが、こうした物語を僕たちが求めていたという証しです。
 僕はエジプトからの移民の息子で、アメリカ人としては一世にあたります。そんな僕のストーリーが今刻まれている。この瞬間にたどり着くことを信じ続けてくれたみなさんには感謝しきれません。僕の一生の宝物になるでしょう。」

 ラミ・マレックはこの映画でフレディ・マーキュリーが愛したメアリー・オースティンを演じたルーシー・ボイントンとの交際が伝えられています。

映画
『ナイト ミュージアム』シリーズ
『ショート・ターム』
『ボヘミアン・ラプソディ』
テレビドラマ
『ザ・パシフィック』
『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』

【クイーン(Queen)】

 『クイーン』は、イギリス・ロンドン出身の男性4人組ロックバンドで、楽曲には『ボヘミアン・ラプソディ』、『キラー・クイーン』、『伝説のチャンピオン』、『愛にすべてを』、『ウィ・ウィル・ロック・ユー』、『炎のロックンロール』、『輝ける7つの海』、『ナウ・アイム・ヒア』、『タイ・ユア・マザー・ダウン』、『ドント・ストップ・ミー・ナウ』、『バイシクル・レース』、『地獄へ道づれ』、『愛という名の欲望』、『レディオ・ガ・ガ』、『ボーン・トゥ・ラヴ・ユー』などがあります。

 ブライアン・メイとロジャー・テイラーの在籍していたバンド「スマイル」がクイーンの母体となり、フレディ・マーキュリーとジョン・ディーコンの4人が揃った1971年を公式サイトでは正式なバンド結成の年としています。

 1985年に行われた20世紀最大のチャリティーコンサート『ライブエイド』では出演アーティスト中最多の6曲を披露、そのパフォーマンスは伝説になりました。
 1986年、アルバム『カインド・オブ・マジック』を発表、『マジック・ツアー』では、ヨーロッパ諸国の全26公演で200万人以上の観客を動員。ツアーは大成功を収めましたが、『クイーン』の4人が揃ってツアーを行ったのは、これが最後となりました。

 フレディ・マーキュリーが亡くなり、ジョン・ディーコンが引退した後も、ブライアン・メイとロジャー・テイラーを中心に『クイーン』としての活動を続けています。

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